2009年、リーマンショックの傷がまだ癒えていない頃、私は29歳だった。
高専を卒業し、超氷河期に就職。偽装請負、派遣、IT土方……。給料は上がらず、雇用は不安定。豊かなくらしなんて夢のまた夢という感覚の中で、ふと思い立ったのが「投資」だった。
あの時の一歩が、今の9,000万円超の資産につながっている。今回は「なぜ投資を始めたのか」「最初に何をやったのか」を振り返ってみたい。

聞きたい聞きたい!どうせ最初から天才的な戦略とかでしょ!!

…むしろ逆じゃ。切羽詰まってただけじゃよ
「正社員になれば安泰」という幻想が崩れた日
派遣プログラマとして数年働いた後、2008年の初頭にやっと正社員への転職を果たした。
「正社員至上主義」というと大げさに聞こえるかもしないが、そのくらい非正規で働いている人が私の周辺には大勢いたのだ。今の人手不足の時代からすると、まったく想像できないだろう。当時は「正社員の椅子」そのものに価値があったように感じる。派遣でも年収400万円とそれなりの給与をもらっていたのだが、なぜか不安がつきまとう。メディアでも「非正規は悪」との扱いが主流であったことも影響したのだろう。
そしてその年の秋、リーマンショックが起きた。
派遣で働いてた人々は次々と契約を終了され職場を去っていく。私は幸い正社員となっていたので雇用は守られた。だが年収は派遣時代の約400万円から300万円台前半へ下がった。それでも「正社員でよかった」という安堵感の方が大きかった。

正社員になったら給料下がったの?

あの当時はそれが普通じゃったんじゃよ。
仕事があって給料もらえるだけマシだったんじゃ

うわー、今の感覚だと全然ピンとこないや。
人手不足で選び放題の時代しか知らないもん
「会社に頼る」ことへの根本的な疑問
派遣より正社員を選んだのは、「安定」を信じていたからだ。だがリーマンショックはその「安定」をあっさりと揺るがした。
職場の空気は一変した。派遣スタッフの契約が次々と打ち切られ、正社員も安心できない雰囲気が漂い始めた。給料は上がらず、将来の見通しも立たない。氷河期世代として散々苦労してきたはずなのに、正社員になってもまだ不安は消えなかった。
このとき初めて、はっきりと思った。「会社だけに頼る生き方は、もう限界だ」と。

会社を信じて正社員になったのに、
その会社がぐらつくって最悪すぎるよね

まあ、でもそのおかげで自分で何とかしようと思えた。
ピンチがチャンスというやつじゃ

前向きすぎ(笑)
でもそういう発想の転換って大事だよね
逆張りで投資を始めた2009年
多くの人がリーマンショックで株式市場から逃げ出していた2009年、私は逆に「今が始めどきかもしれない」と考えた。
当時、仲良くさせて頂いていた取引先の課長がこう叫んでいたのを今でも覚えている。「100万吹っ飛んだ!」と。それまで投資は「どこか遠い世界の話」という感覚だった。でもその瞬間、はっきりと気づいた。身近な普通の会社員が、投資をしているということに。
怖い話ではあった。だがそれ以上に「投資って、自分にも関係あるものなんだ」という感覚の方が強く残った。それが、本格的に興味を持つきっかけになった。
幸いなことに、投資を始める元手はあった。新卒で川崎に一人暮らしをしながら、1年目から毎年100万円ペースで貯め続けていたのだ。給料が低くても、もともとお金を貯めることは得意だった。投資を始めた時点で、手元には約1,000万円の貯金があった。
「どうせ給料は上がらない。ならばお金に働いてもらうしかない」。切実な動機だった。華やかな投資への憧れではなく、生活防衛としての投資だった。

課長が100万吹っ飛んだって叫んでたの!?
それで興味持てるの、すごくない?

怖いというより、
あ、普通の人もやってるんだって気づいた感じじゃな。
他人事じゃなくなった瞬間じゃ

でも1年で100万貯めてたって、それもすごくない?
川崎で一人暮らしでしょ?

まあ、もともと貯めるのは得意じゃったからな。
その話はまた別の機会で語るとしよう

絶対聞かせてよ!気になるぅ
最初の一手:債券の投資信託を「とりあえず」買ってみた
最初に買ったのは、債券の投資信託だった。理由は単純で、何を買っていいかまったくわからなかったからだ。現在のようにオルカン、S&P500連動インデックスなどは無かったように思える。投資情報も当時は多くはなかったし、知識としては「株はギャンブル」といった、今思えばねじ曲がったもの。でも何か買わないと始まらない。消去法に近い形で、比較的値動きが穏やかな債券ファンドに落ち着いた。
買った翌日から、毎日値動きを確認した。上がれば嬉しい、下がれば不安になる。ただその値動きというのが、一日でせいぜい数百円から千円程度。今思うと笑えるのだが、当時はその千円に本気で一喜一憂していた。
今は百万円単位で動く日もある。人間は慣れるものだと思う。ただ、あの頃の「千円に真剣だった自分」がいたからこそ、今があるとも感じている。

債券!?株じゃないんだ。
しかも理由が「とりあえず」って正直すぎる(笑)

まず買うことの方が大事じゃったんじゃよ。
調べて理解しようとしてたら、一生始められん気がしてのぉ

千円の値動きに一喜一憂してたあるじ、
ちょっと見てみたかったかも。かわいい

うむ、当時はかわいかったぞ!
今は立派なオジサンじゃ
始めてみて気づいたこと
債券ファンドの値動きには、すぐ慣れてしまった。慣れると今度はつまらなく感じてくる。「もっと動くものが見たい」という気持ちが芽生え、株式の投資信託にも手を出した。銘柄は正直、今でも覚えていないくらい適当に選んだ。
ところがこれが、ビギナーズラックだったのか、時期がよかったのか、1年で約100万円増えた。「投資ってすごい、自分には才能があるのかもしれない」などと本気で思い始めた。
その後、調子に乗った私は大きな失敗を犯すことになる。——が、その話はまた別の機会に。
振り返ってみると、「始めたこと」それ自体が最大の正解だったと思う。完璧なタイミングも、完璧な銘柄もなかった。とりあえず動いてみて、痛い目を見て、それでも続けた。それだけだった。

1年で100万増えたの!?
そりゃ調子乗るよ、私でも乗る(笑)

あの頃は自分が天才だと思っておったよ。
その後どうなったかは……察してくれ

え、気になる!大損したってこと?
絶対今度話して!

いつかな。
それも大事な話じゃから、ちゃんと別で語ろうと思っとる
氷河期世代だからこそ、「自分で作る」しかなかった
バブル世代は就職で恵まれ、ゆとり世代・Z世代は情報とツールに恵まれた。氷河期世代は、その両方を持たずに社会に出た。今では「氷河期おじさん」とまるで社会のお荷物かの如く揶揄されたりもする。
派遣より給料が下がっても正社員を喜んで受け入れた。それが当時の氷河期世代の「現実」だった。今の人手不足で売り手市場の若い世代には、ちょっと信じがたい話かもしれない。
だが逆に言えば、そういう環境だったからこそ「会社や国に頼るな、自分で資産を作れ」という発想に早くたどり着けた。逆境が、投資家としての自分を育ててくれたとも言える。

氷河期世代って損ばっかりみたいな話だけど、
それがあるじを強くしたんだね

株の暴落より仕事がなくなる恐怖の方がずっとこたえたからな。
相場の下落なんぞ可愛いもんじゃ

それ最強のメンタルじゃん(笑)
まとめ:最初の一手が、すべての始まり
2009年、29歳で始めたインデックス投資。それから15年以上が経ち、資産は9,000万円を超えた。億り人まであと一息のところまで来ている。
「もっと早く始めればよかった」とは思わない。あの時の自分が、できる範囲で一歩を踏み出したことを誇りに思っている。
同じ氷河期世代で、まだ投資を迷っている人がいるなら伝えたい。完璧なタイミングも、完璧な商品もない。大事なのは、始めることだ。

15年以上続けてきたんだね。
途中でやめたくなったりしなかったの?

大損した時も不思議とやめようとは思わなかったのぉ

それが9000万円かぁ。
継続って本当に最強の投資手法だね

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